5年ほど前に知人の女性が訪ねてきました。実は20数年前に母が購入したダイヤモンドリングを孫の教育資金に当てたいのですがどうしたら良いでしょうかと言うご相談でした。ちょうどその年に孫の教育資金を1500万円まで非課税で贈与できる新制度が始まったばかりで早速それを利用出来ればとお考えになったようです。
見ると6カラットのペアーシェイプダイヤモンドがシンプルにセットされたリングです。ペアーシェイプは同じ重量のラウンドと比較すると2-3割大きく見えますので、ラウンドの8カラット近い堂々としたサイズです。ダイヤモンドで有名な海外ブランド店から2,000万円で購入されたものだそうです。孫が2人いるので出来れば1,000万円ずつ渡したいとの希望でした。ちょうど大粒ダイヤモンドが数年で3倍ぐらいに値上がりしていた頃でしたので、相場を反映するオークションでの売却をお勧めしました。当時私は上場しているオークション会社の査定人を請け負っており、リザーブ価格の決定権は私にありましたが、オークション相場でも1,800万円が妥当なリザーブでした。そこで不落の可能性もあることを依頼人に伝えて、思い切って2,000万円リザーブで出品しました。結果はブランドの人気も手伝って2,100万円で落札されて胸を撫で下ろしたことを今でもはっきり覚えています。依頼人も会場に見に来ていて落札された後で強く喜びの握手したのは言うまでもありません。
その頃別の方からも売却依頼がありました。ちょうど前述のダイヤモンドリングと同時期に購入されたイエローゴールドのダイヤモンドネックレスです。パリの有名なブランドの物でお母様から受け継いだ娘さんからの相談です。幅が2~3センチほどのイエローゴールドにメレーダイヤモンドがびっしりとパヴェセッティングされた大変豪華なネックレスです。まさにバブル真っ盛りの熱狂を感じさせるものでした。購入価格は1千万円程度との事でしたが、残念ながら現在の日本では豪華すぎて人気がなさそうなので、外国人も多く参加するオークションに出品しました。リザーブ価格はブランドプレミアムも考慮して100万円としました。結果はリザーブ価格を少し超えた110万円で落札されました。
同時期に購入された高額のジュエリーですが、一方は20数年楽しんで当時2,000万円のリングがほぼ同額の2,100万円で落札さ、方や1,000万円が約10分の1の110万円となってしまいました。これは何故でしょうか。
まずは大粒ダイヤモンドが数年で3倍になったと言う幸運がありました。そして基本的に宝石は1粒が大きければ大きいほど資産性が高くなり、逆に小粒になればなるほど資産性よりファッション性が高くなります。流行しているスタイルは人気がある間は高くなりますが、流行が終わると殆ど評価されません。ジュエリーにある程度の資産性を求めるなら、この事例のように人気のある宝石で出来るだけ大きなサイズを求めることをお勧めします。