原田コラム

2011/02/08

インド 加速するダイヤモンド戦略

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

Bharat Diamond Bourse

2月3日(木)22:00~23:00 放映の「きょうの世界」NHK BS1に出演しました。
番組の内容は以下の通りです。

世界経済の新興勢力インド。
いまダイヤモンドをめぐるビジネスでも主導権を握るべく積極的な戦略に乗り出している。
目標は、原石の買い付けから研磨、販売まで一貫したビジネスを手がけ、世界のダイヤモンド取り引きの中心地となることだ。
昔からダイヤの研磨業が盛んだった実績をもとに、関連企業が国の支援も受けながら積極的な展開を図っている。
そのシンボルとなる施設がムンバイの巨大なダイヤ取引所だ。
2500もの企業が入居可能という世界最大級の規模を誇る。
世界のダイヤモンド業界の覇権を握ろうとするインドの戦略に迫る。

NHKの現地記者が作成したビデオを見て、コメントしました。
放送では伝え切れなかったことも加えて以下にQ&Aとしてまとめました。

Q:そもそも何故インドでダイヤモンド産業が盛んになったのでしょうか?

A: 1725年にブラジルでダイヤモンドが発見されるまで紀元前からインドが唯一のダイヤモンドの産地でした。
もともとカラーストンを中心に宝石研磨の技術があったこととジュエリーを装う文化がそれを支えたことは確かです。

1970年代に圧倒的な低賃金を武器に、今まで研磨に適さなかった低品質で小粒のダイヤモンド原石を研磨しメレーダイヤモンドに仕上げることで急成長しました。
ジュエリーの大衆化とオーストラリアのアーガイル鉱山による低品質の原石の大量供給が始まったこともあって産業の規模が大きくなり、その後、現地通貨安の常態化が差益を生んで更に資本を蓄えることになりました。

80年代までDe Beersは、インドに研磨産業が一極集中することを避けるため、より大粒な原石を直接販売せずに各研磨地の傘下の業者に配給していました。
しかし、力をつけたインドの業者の優位は変わらず、徐々に他の研磨地の仕事を奪っていきました。

21世紀に入るとダイヤモンド原石におけるDe Beersの独占が崩壊して資源メジャーによる寡占状態に入りました。
原石の入手ルートが多様になり、ますますインド業者の力が強くなってきています。

Q: 覇権を握ろうとするそのもくろみはうまくいくのか?

A: 鉱山会社からの直売以外の原石取引の中心はアントワープです。
一番の買い手であるインドがアントワープのマーケットを通さずに買いたいのは当たり前です。

可能になるかどうかは、これから政府がどのくらい後押ししてくれるかが大きいと思います。
更なるインフラの整備、国際都市として恥ずかしくない環境、アクセス、法整備が必要です。
そして、世界のダイヤモンド業者がこぞって新しい取引所にオフィスを構えるようになったら流れが変わるでしょう。

鉱山会社からの販売は、安定的な売り上げを見込めるサイト販売が柱です。
それに入札制を組み合わせて収益率を上げていきます。

現在のダイヤモンド原石価格は歴史的高値の状況です。
このような値上がり局面では鉱山会社にとっては入札制が有利です。

まず、アントワープで行われている入札がムンバイで行われることから始まるのかもしれません。

とにかくまだ取引所として機能しているとはいえない状況なので、まずムンバイの主な業者の入居が先決です。
入居が完了するのは来年の半ばといわれています。
その後は、以外に早くもくろみ通りになるかもしれません。