〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
「もう使わないんです。」
先日、ジュエリーの整理の相談にみえたご婦人が発した言葉。
使う機会がなくなるような年齢ではないので不思議だった。
持ち込まれたのはダイヤモンドやパールがセットされた立派なブローチの数々。
品質的にはまったく問題がなく美しい。
理由を尋ねると、
ブローチが好きでたくさん買ってきた、しかし最近は冬でもさほど寒くないので厚手のジャケットを着なくなり、大きいブローチがつけられなくなった、
とのこと。
大きい=重いので、薄手のジャケットでは安定せず使いにくい。
つまり温暖化によって服装が変わった結果だったのだ。
反対にカナダでは大振りなブローチが良く売れていると聞く。
冬が厳しくパーティー等でブローチを着ける機会が多いカナダでは当然、そうなるのだろう。
温暖化がジュエリーの売れ筋を変えるとは思いもしなかった。
使われなくなったブローチを日本からカナダのような国に輸出して儲けよう、なんて考えがよぎるのは商人の悲しい性(さが)か。