原田コラム

2012/05/16

Christie’s Geneva Lily Safra Collection 3 “JAR”

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

知る人ぞ知るJAR(Joel Arthur Rosenthal)のコレクションです。
欧米のセレブリティが争って注文し、顧客になることすら難しいブランドです。
ヴァンドーム広場のお店は小さく「JAR」と表示されているだけで、外からは何も見えません。
選ばれた方のプライベートジュエラーです。

○Multi-color Sapphire Diamond Bands by JAR
lily Safra by JAR 11

見積価格:SFr.28,000-37,000
落札価格(手数料込み):SFr.105,000 ($113,304) (約900万円)
様々な色のサファイアのプリンセスカットを一列にプロングセッティング(爪留め)したエタニティーリングの3本セットです。
3本の内2本には片方にラウンドブリリアントカットのダイヤモンドが一つおきにセットされて、重ね着けした際に華やかさを与えています。
lily Safra by JAR 11 Stacking

本来サファイアは硬度の点でエタニティーリングには向きませんが、爪留めにすることで直接当たる事を避けています。
ラウンドのダイヤモンドも3点の爪で留められてガードルが当たる事を防いでいます。
“Bands”とは米国の宝飾店の間では一般的な言葉で、バンドタイプリング(=ベルト状のリング)を指します。
1992年製

*画像が小さい場合は画像をクリックしてください。大きくなります。

○Sapphire Ruby Dimaond Ear Clips by JAR
lily Safra by JAR 12

Cushion-shape Sapphire 23.80cts
Cushion-shape Yellow-Orange Sapphire 21.40cts
見積価格:SFr.230,000-460,000
落札価格(手数料込み):SFr.255,000 ($275,168) (約1,900万円)

ムガール庭園に咲くチューリップをモチーフにしたと思われる大きなイヤリングです。
中心に大粒のブルーとイエローオレンジのサファイアをセットし、パヴェセッティングしたルビーのメレーで覆い、縁取りはメレーダイヤモンドを使って際立たせています。
JARの創造性の豊かさを象徴する作品です。

○Diamond Charm Ring by JAR
lily Safra by JAR 13

Diamonds: 16.98cts+15.31cts
見積価格:SFr.280,000-460,000
落札価格(手数料込み):SFr.903,000 ($974,417) (約7,700万円)
落札者:個人蒐集家

Taviz-cutと紹介されている樽型の2つの大粒ダイヤモンドが吊り下げられたダイヤモンドエタニティリングです。
lily Safra by JAR 13b

このTavizとはインドやパキスタンでお守りとして身につけられているものを指していると思います。
それにしてもそれぞれ15カラットを超えるダイヤモンドを吊り下げて指輪に加工するとは大胆な発想です。
2つのダイヤモンドはお互いにぶつからない位置にセットされています。
また、キャップをつけていることでエタニティリングのメレーダイヤモンドにも当たりません。
恐らくキャップで隠れているダイヤモンドの先端にレーザーで穴があけられて固定されているものと推測します。
リングの内側の突起はsizing beads(サイズ調整用突起)と思われます。
2004年製

続く。