原田コラム

2012/09/25

ネット情報にご用心

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

ポピガイ・クレーター

「ロシア超大型ダイヤモンド鉱山公開 世界3000年分のニーズを満足」
「ロシアの隕石落下跡地に3000年分のダイヤモンド」

先週から今週にかけて、ネット上に上記のようなタイトルのニュースが掲載されました。
内容は以下の通りです。

イギリス『デイリー・メール』9月17日の報道によると、ロシアはこのほど、1970年代に発見していたダイヤモンド鉱脈を公表した。この鉱脈は東シベリア地域にある直径100キロメートル以上の隕石クレーターにあり、埋蔵量は1万億カラット以上、世界宝石市場の3000年分のニーズを満足できると明らかにした。

科学者がこのポピガイ(Popigai)と呼ばれる隕石クレーターには、すでに3500万年以上の歴史があり、ダイヤモンドの埋蔵量は全世界総量の10倍に相当する。ロシアがこの発見を今まで隠していたのは、ダイヤモンドの価格が暴落して自国のダイヤモンド業の利益を損なわないようにするためだと指摘している。

ポピガイ(Popigai)のダイヤモンドは「衝突ダイヤ」とも呼ばれ、隕石のような物体がダイヤ鉱脈と衝突して形成された産物で、硬度は普通の宝石の2倍、工業用と科学研究の方面での使用価値が非常に高い。先週末、ロシア高官は記者会見を行い、ロシア政府が同鉱脈の近隣にあるロシア科学アカデミーシベリア支部地質学・鉱物学研究所の科学者がこの宝蔵の神秘的ベールを開けることを許可したという。

ロシア科学アカデミーシベリア支部地質学・鉱物学研究所の院長が、この新資源が宝石市場に大きな衝撃を与える可能性があり、私が言っているのは「数万億のカラット」で、みんなはよく知っているロシアの埋蔵量である10億カラットのヤクート・ダイヤ鉱脈のとはるかな差がある。また衝突ダイヤは独特の表面やもっと大きな体積があり、より高い価値があると話した。

ロシアのダイヤの生産量は2007年にピークに達して、13.5億ドルだった。98%のダイヤはベルギー、イスラエル、米国、東南アジアに輸出された。経済危機の影響で、ダイヤの生産高は2009年を底に下落、生産額はわずか3.5億ドルだった。今世界経済にすでに復活の兆しが現れ始めていることから、ロシア政府が今頃この秘密を公開に踏み切った理由になっているのだろう。

真偽の問い合わせがありましたのでご報告します。
隕石の衝突によってあらゆる物質が融解・気化し、高温高圧によって炭素からダイヤモンドが生成される、これは『Impact Diamonds(衝突ダイヤモンド)』として知られていますが、作られるのはパウダー状から2ミリ程度の宝石品質でないものです。
従って、宝石市場への影響はありません。

ネット上の情報は玉石混交です。
現在は、SNS等で個人でも情報発信が手軽に出来ます。
情報を見て、それを基に発信する場合はその情報が正しいか否かを確認する必要があります。
この事例を他山の石とし、気をつけましょう。