原田コラム

2013/01/08

ダイヤモンドは値上がったか

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

2002-2012 D IF

ここ5年ほどのオークション相場は新興国景気の過熱と資産投資により右肩上がりで推移してきた。大粒のダイヤモンドに始まり、ファンシーカラーダイヤモンド、無処理のルビー・サファイア・エメラルド、天然真珠とより稀少性の高いものを求めて値上がりの品目が増えてきた。既に昨年より高止まりしていたカラーレスやファンシーカラーのダイヤモンドは今年の夏前から調整が入って少し弱くなっているが鉱山会社の減産で下げ渋っている状態だ。

上の表は2002年12月を100とした場合のラウンドブリリアント D IFのカラット単価の増減率をグラフにしたものである。(数値はRapaport Price Listより)サイズは0.3、0.5、1,0、3.0、5.0カラットサイズを選定。0.01~0.03カラットサイズも参考のため追加した。10年間でどのくらい値上がり(値下がり)したかを示したものだ。もちろんオークションの相場とも連動している。

1カラット、3カラット、5カラットが2005年から値上がり始め2007年から2008年にかけて加速度的に上昇した後、2008年の後半に下落している。いわゆるリーマンショックである。株価とは異なりその後回復、ショック前の水準を超えるのにグラフでは1~2年を要しているが、実際はもっと早かった。性格は異なるがこの値動きは金相場に近いのが興味深い。では1カラット未満の0.5カラット、0.3カラットはどうかと言うとその間、大きな動きはない。また動きの中でも1カラットの上昇率が1.5倍程度なのに比較して3カラット以上は2.5倍を超えている。ここに稀少性の差が現れている。マーケットは3カラット以上に資産性を見出したとも言える。オークションとは関係ないが、濃い青の線で示した0.01~0.03カラットサイズは資産バブルともリーマンショックとも無縁であったのに2011年より急上昇している。このサイズの最高品質は主にブランドジュエリーとブランド時計に使われている。普及品の苦戦を尻目にブランドジュエリー・時計は中国初め新興国で販売が伸び、品不足から値上がりを起こした。グラフでは1.5倍程度だが実際の取引は2倍になった。これも過去20年ぐらいなかった動きである。10カラット以上のカラーレスやピンクやブルーのファンシーカラーダイヤモンドもこの3カラット以上の値動きに連動している。無処理のルビー、サファイア、エメラルドの値動きもタイムラグはあるがダイヤモンドを追っている。

このように一つのグラフからダイヤモンドのサイズによる稀少性の違いが見てとれる。
長期に渡る相場の変動にも注目し、プロとして顧客に求められたら的確なアドバイスを行いたいものである。

初出:リ・ジュエリービジネス・レポートNo.4