原田コラム

2013/03/04

4Cの使い方

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

Pear-shaped Diamond Necklace

アントワープの友人はさるブランドから受けたダイヤモンドの注文に追われていた。
0.3~5カラットサイズのペアーシェイプをグラデーションさせる豪華なネックレスのダイヤモンド集めている。
注文は全てDカラーInternally Flawlessで同じプロポーションでそろえることが条件だ。
その後にE VVS1だけ、更にF VVS2だけで揃える注文も入っている。

ファンシーシェイプは縦横のサイズと輪郭が一つ一つ異なる。
ネックレスは左右が対になっているのでほぼ同じ輪郭のものをグラデーションさせながら複数揃えなくてはならない。
気の遠くなるような作業である。
そこにカラーとクラリティーを揃える条件が加わる。
最低限の条件をクリアして、そのほかの条件はある程度無視しなければ納品ができない。

ブランドも以前はこのような注文はしなかった。
Eカラー以上、VSクラス以上、ダークインクルーン(黒いインクルージョン)無し、輪郭と輝きを揃える事という程度の条件だった。
この「輪郭と輝きを揃える」と言うことは「美しさを揃える」と言うことだ。
業者はマーケットから条件のダイヤモンドを集め、その中からファセットが織りなす立体的なモザイク模様の強弱をあわせる作業に集中する。
結果としてDもあればEカラーもある。
VVSもあればVSもある。
決してDカラーInternally Flawlessだけとはならない。

ブランドの仕入れ担当者は4Cで美しさが決まると信じているのだろうか。
それともカタログの表示が揃っていれば価格政策上分かりやすいというだけの理由だろうか。
何れにしても美しさは二の次になるであろう。

聞くところによれば、人材の流動性の高い欧米では取り扱う商品が異なってもブランドを渡り歩くことが多いらしい。
昨日までバッグを扱っていた人が今日からはジュエリーを担当することもあると聞く。
以前のような専門家の登場が待たれている。

*画像は2008年4月のSotheby’s Hong Kongに出品されたダイヤモンドネックレス