〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
CVD(Chemical Vapor Deposition: 化学気相蒸着法)
高い圧力を必要としないため小型な設備でも製造でき高温高圧法と比較して費用も大幅に低くできる
比較的最近の技術で以下のように歴史は浅いが、技術進歩が目覚しく精度が急激に上がっていて鑑別が容易くなくなってきている。量産によるコストダウンのスピードも速い。
〈歴史〉
2003年 Appolo Diamonds社 宝石品質生産成功(ブラウン)
2006~2007年 無色E~H 0,15~0.30ctサイズ
2009年 Appolo Diamonds社 無色からピンク作る
2011年 Gemesis社 0.24~0.90cts Colorless~Near colorless IF~VS ネットで買うことが出来る。
2011年 SCIO社CVDを販売、Appolo Diamonds社を買収。
現在では確認しているだけで2社がCVDを小売販売している。
《製造方法》
・圧力:真空に近い状態(-1/10) *天然は地下150キロ5万気圧1,600~1,800度
・温度:800-1,000度
・真空に近い状態した装置の中を800から1,000度に加熱して水素ガスとメタンガスをマイクロ波からのエネルギーでプラズマ化して種結晶の上に層状にダイヤモンドを成長させる。
・成長:1時間30ミクロン、1週間で5-6ミリ (成長速度を速めることで1週間で1センチ以上も可能)
・種結晶:1×1センチ (40-50個まで一度に置くことが出きる機械もある)将来は数が増えていく。
筑波大学では1×1インチ、2×2インチも可能
・デビアスでも研究のために無色からブルー、1カラットまで製造。
・TypeⅡaのブラウンを高温高圧装置を用いて色を薄くしてカラーレスに近づける。
(天然のブラウンの色の起源は格子欠陥だが、CVDはダイヤモンドに成りきれなかったカーボン)
《市場にあるCVD Synthetic Diamond》
サイズ:0.24~1.0cts *GIAに持ち込まれた最大のCVDダイヤモンド:MQ 2.16ctd J-K SI2(2013年1月末)
カラー:Colorless-Near colorless E-H
クラリティ:IF-VS
タイプ:TypeⅡa
〈鑑別法〉
・イレギュラー ブラック インクルージョン・・・ダイヤモンドに成りきれなかったグラファイト
・非常に強いひずみがある。高い干渉色
・赤色の蛍光(天然には殆どないが、HTHP処理で緑色の蛍光になる。最近では青色も出てきた)
・成長方向:天然は立体的に成長するが、CVDは重ねるように一方向に成長。最も重要な鑑別法。
・水素:天然でも入っているが、赤外分光で異なるピークを示すが、HTHP処理で天然と同様になる。
赤外領域で、天然は3107nm、CVDは3123nmに吸収がある。
・シリコン:製造装置のガラスの蓋がエッチングされてシリコンが入り込むのでシリコンの有無もCVDの特徴に
なるが、天然でも稀に入ることがあるので、その場合は成長方向を組み合わせて確認。最近ではシリコンが入らないCVDも出てきているとも言われているので要注意。
・CVD=TypeⅡa YesでもありNoでもある。ほんの僅かに窒素が入っているが、ほぼTypeⅡaに近い
・CVDをHTHP処理すると強い燐光が出るのか分かっていない。
〈まとめ〉
・合成を鑑別するには「天然を理解する」
・多くのデータを集める
・簡単に早く鑑別できる機械を開発する
・良くトレーニングされたオペレーターが不可欠