〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
ダイヤモンドの価格指標として有名なラパポートレポートはラウンド版とペアーシェイプ版に分かれている。
このリストはタイトルにAPROXIMATE HIGH CASH ASKING PRICE INDICATIOSとあるように「大よその掛け値」である。
掛け値であるので実際の相場はこの価格より幾分安く取引される。
その割引幅は個別の品質や需給によって異なる。
バイヤーはペアーシェイプのリストを使って全てのファンシーシェイプの価格を計算する。
歩留まりからプリンセスカット、エメラルドカットはブリリアント系より1~2割低いのが基本だ。
ラパポートもファンシーシェイプのリストでは苦労している。
各シェイプに対応して過去に2度大きく改定した。
1996年7月にマーキスとエメラルドカットを追加した。
そして2004年の5月にはプリンセスカットの需要の高まりからエメラルドカットを廃止してプリンセスカットのリストに差し替えた。
しかし、バイヤーはどの新しいリストも使わずにペアーシェイプのリストだけを使い続けた。
結果、2007年3月にはペアーシェイプのリストだけに戻った。
理論が実践で通らなかった瞬間だ。
ファンシーシェイプは一つ一つが異なるので価格形成には複雑な要素が絡みあう。
買い手も売り手も思い込みが強いのがファンシーシェイプでそこが宝石本来の醍醐味だ。
そのファンシーのリストの割引幅に変化が生じている。
カット良いもの(姿形のよいもの)の中に割引の無いものや逆にリスト以上で取引されるものも出てきた。
反対にカットの悪いものは何割下げても売れない。
カットの悪いものは納得できるが良いものがそれほど値上がったのだろうか。
歩留まりの違いから長い間ペアーシェイプのリストは平均してラウンドの2割安程度で作られていた。
リーマンショックでダイヤモンド相場は一度下がったが程なく相場は回復した。
特に大粒は下落した以上に値上がりした。その過程でラパポートはペアーシェイプのリストをラウンドほど上げなかった。
結果、2割ほどあったラウンドとの差が3割程度になったこととカットの良いファンシーシェイプの需要の高まりで割引幅に変化が起きた。
ラパポートがペアーシェイプのリストを大幅に上げない限りこの傾向は続くであろう。
ファンシーシェイプの扱いの少ない業者は相場の踏み違いに注意が必要だ。
原田信之
No.09 リ・ジュエリービジネス・レポート(2013年11月1日発行)より