原田コラム

2013/11/27

Exceptional Ruby

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

昨日Christie’s Hong Kongのジュエリーオークションが行われました。
落札総額HK$859,087,250 US$110,822,255(約111億円)、落札率86%(ロット数)と言う好結果となりました。
10年前は百万ドル以上は高額落札になりましたが、今回は百万ドル以上が26ロットもあり、3百万ドル以上でなければベスト10にも入りません。
因みに百万ドル以上の総額は77百万ドルで全体の70%を占めます。
全体のロット数が309ロットなので僅か8%の数の商品が全体の7割を売り上げています。
ジュエリービジネスの常ですが、高額品が売れなければ商売になりません。
また、高額落札が伸び続けているのは貧富の格差が拡大していることに加えて、先進国の金融緩和であふれた資金が現物資産に向かわせているのも否定できません。
これもまた宝石の持っている魅力の一つです。

今回は落札された中で気になったものを一つだけ紹介します。

○Ruby Diamond Ring

13.21ct Burma Mogok Ruby UT

Ruby
Shape:Oval-shaped
Cut: Mixed-cut
Weight: 13.21ct
Size: 13.79X11.79X8.50
Origin: Burma Mogok(ミヤンマーモゴック鉱山)
Treatment: No indications of heating(加熱の痕跡認めず)
見積価格:HK$38,000,000-58,000,000
落札価格(手数料込み):HK$46,040,000 US$5,966,784(約6億円)
1カラット当たり価格:US$451,000(約4,600万円)

このサイズでこれだけ透明度の高いルビーは非常に稀です。
古くはスリランカ産、最近ではタンザニア産のルビーでは見ることがありますが、ビルマ産でしかもモゴック鉱山のものに出会うことはプロとしても多くはありません。
いわゆるピジョンブラッドと言われる濃い赤のものではありませんが、透明度も宝石の重要な要素です。
しかし、透明度が高ければ高いほど良いかと言うとそうでもありません。
合成ルビーのように混じりけの無い高い透明度は魅力がありません。
宝石は不完全なところが魅力であり難しいところです。
このルビーも高い透明度に優しさも感じます。
色味も赤に紫味(ピンク味)を感じるところにモゴックの特徴が現れています。
全体のプロポーションも深さが72%と決して浅くはありませんが、このボディカラーを引き出すのには必要で許容できます。

13.21ct Burma Mogok Ruby side view

SSEF, Gubelin, AGLと3つのラボのレポートを添付する念の入れようです。
しかも、SSEFとAGLはモゴック鉱山の特徴を備えているとのAppendix(追加説明)も提出してます。

13.21ct Burma Mogok Ruby SSEF Report