〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
2006年2月15日のスイスSt.MoritzのPalace Hotelで行われたChrisitie’sのジュエリーオークション会場は一つのルビーリングに人々の関心が集まっていた。
それは8.62カラットのビルマ産無処理(加熱の痕跡を認めず)のルビーでBlugari製のリングにセットされていた。(下の画像)
オークションは見積価格CHF520,000 – CHF780,000($398,621 – $597,931)を瞬く間に上回ってその後長いビットの応酬の末にCHF4,724,000($3,621,314)でハマーが打たれた。
何と見積価格の下限の9倍だ。
少し前から稀少性の高い宝石の国際相場が上がり始めていたが、その価格にマーケットは驚いた。
落札者はGRAFFのオーナーLaurence Graff氏だった。
その時のGraff氏のコメント“the cut and spread of colour is the finest I have ever seen”からも比類なき美しさがわかる。
その後Graff氏はルビーをGRAFF RUBYと命名し新たなリングにセットした。(一番上の画像)
それがGRAFFの店頭を飾ったのは言うまでもない。
昨日ルビーは再びオークションに現れた。
会場はSotheby’sのジュネーブの最終ロット。
見積価格は前回の落札価格を上回るCHF6,500,000 — 8,560,000 CHF($6,548,035 – 8,623,258)に設定された。
落札結果は見積価格の上限に近いCHF8,285,000 ($8,346,226 USD) 約9億6,000万円だ。
約9年前の見積価格の下限の16倍になった計算だ。
落札者はまだ分からないが、このルビーが次に現れるのはいつの日だろうか。
今回は比較的早い再登場だったが、受け継いだ者が個人の場合は通常30年以上後になる。
稀少性の高い宝石は預り手を変えて受け継がれる。
実は私は2006年のオークションの下見会場でこのルビーを見ている。
彩度の高い赤色と何とも言えない優しさを備えていたのを記憶している。
運が良ければ生きているうちにもう一度お目にかかる機会があるかも知れない。
せいぜい長生きできるように養生しよう。
モゴック鉱山産の明記があるSSEFの付記
サザビーズは今回のハイライトを動画でアップしている。
中にこのルビーもあるので良くご覧になりたい方はどうぞ。