〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
52カ国から4,300の出展社を募るアジア最大の展示会は3月2日から6日の空港近くのAsiaWorld-Expで行われるThe Hong Kong International Diamond, Gem and Pearl Show(ルース) と4日から8日の市中のHong Kong Convention and Exhibition CentreでHong Kong International Jewellery Show (ジュエリー)に分かれて開催されます。
懸念が現実に
中国経済の減速から落ち込みを覚悟した昨年9月のショーが概ね一昨年並みで終わったことから抱いた出展社の淡い期待は初日の来場者数の少なさに打ち砕かれました。
往来の少なさに増してバイヤーの消極的な購入意欲に殆どの出展社は今年の厳しいビジネスを覚悟しました。
ダイヤモンド
出展社の中でも多くを占めるダイヤモンドの業者は無力感が漂っています。
高い原石価格と低迷する研磨済み価格に挟まれて元々少ないマージンに需要減が加わり、流通の構造的な問題に成す術がなく不満を超えてぼやくしかありません。
その中でもブランドのブライダルが堅調な高品質ラウンドのポインター(0.30-0.99ct)は一定の需要があります。
カラーストン
ルビーの主役は完全にビルマ産からモザンビーク産に移っています。
会場には黒光りしたモザンビーク産が溢れています。
ビルマ産はモンスー鉱山産の加熱処理はありますが、無処理(加熱の痕跡認めず)は極僅かしかありません。
見つけても高品質のものは少なく、価格はすでにカシミール産のサファイアのような手の届かないものになっているので探すバイヤーも少なくなっています。
ルビーほどではありませんが、サファイアもビルマ産は多く見る事ができません。
現在の主役はマダガスカル産です。もちろんスリランカ産もありますが、新産に限ってはマダガスカル産の品質が勝ります。カシミール産はウインドウに並べてあるものは数えるほどしかありません。
エメラルドはコロンビア産もザンビア産も豊富です。
含侵の程度がInsignificantとかMinerと表示してありますが含侵がオイルなのか樹脂なのかは不明なので、すでに取引のある信頼できるところのものしか見ないバイヤーが多いように見受けられます。
中国で人気のあるトルマリンルーベライトと米国で人気のモルガナイトは原石不足で供給が限られています。どちらも放射線処理で稀少性は低い石ですが、放射線処理に向く原石が足りません。
宝石としての価値は殆どないので大量に存在するのを前提に計画をしていたところが苦労しています。
やはり天然石なので宝石としての側面があることを再確認しました。
カラーストン全般に言えるのは良い品質の供給が足りません。
世界経済に不透明感が漂って景気は停滞気味ですが、カラーストンの供給の点では少しスローダウンしたほうが需給が見合います。