〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
ビルマ産の無処理(加熱の痕跡認めず)のルビーが高騰しています。
ビルマ産と言っても伝統的なモゴック地区の鉱山のものと1980年代後半から開発されたモンスー鉱山と大きく分けて2つあります。
モンスー鉱山のものは殆どが高温加熱処理を必要としますが、モゴック地区の中には高温加熱処理を必要としないものが存在します。
モンスー鉱山でも稀に無処理のものが存在しますが、特徴が異なるのでプロが見れば判断がつきます。
モゴック産の無処理のルビーが高騰した主な理由は以下の3つです。
1つ目は、1990年代後半からデータの集積からラボが高温加熱と無処理が鑑別できるようになったこと。
それまでは高温加熱と無処理が同じ土俵で扱われてきましたが、鑑別ができるようになったことで高温加熱処理以前の稀少性に戻りました。
結果、消費国で無処理のブームが起き値段が上がってきました。
2つ目は、無処理で美しいもの産出が極僅かになっていることです。
伝統のあるモゴック鉱山も産出が細ってきて品質の良いルビーの産出は極僅かです。
代わって出てきたモザンビーク産も十分に美しいのですが、モゴック産独特の色と透明度とは異なります。
3つ目は、もともと自国通貨を信用していないミヤンマーの人はお金が貯まるとルビーに換えておく習慣のありました。
そこに海外で無処理のルビーが高値で売れる情報が入ってきて投機を呼び、現在世界で最も相場の高いのがミヤンマー国内です。
そのためミヤンマーからルビーが輸出されなくなり、ミヤンマーの外で見る数が極端に少なくなりました。
開放政策で外資の投資が盛んになり、土地が高騰しバブル化していますがルビーも同様です。
カシミールサファイアは100年以上前にほぼ枯渇してしまいましたが、モゴック産のルビーは少ないながらも産出は続いていますので本当にカシミール化するにはまだ時間の猶予があります。
また、ミヤンマーのバブルが崩壊して国外にルビーが流失し、相場も下落する可能性もありますが高温加熱処理のものの相場が下支えするので驚くような値下がりは想像できません。
無処理モゴック産高品質ルビーの新たな産出は期待できませんが先進国には過去に購入したものが新産の何倍もありますので、これからの主な供給源が還流市場になることは避けられないでしょう。
画像はモゴック産無処理ルビーの美しいシルクインクルージョンの顕微鏡画像です。