原田コラム

2015/04/07

オークションのジュエリーから

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

Sotheby’s Hong Kongのオークションよりジュエリー2点の解説をします。

○Fancy vivid Yellow Diamond Ring/Pendant

77.77ct Fancy Vivid Yellow VS2 Ring

Shape: Cushion-shaped
Cut: Modified brilliant-cut
Weight: 77.77cts
Color: Fancy Vivid Yellow
Clarity: VS2
Type: TypeⅠa
見積価格:HK$53,000,000-60,000,000

77.77ct Fancy Vivid Yellow VS2

ラッキー7に仕上げられた大粒の鮮やかな黄色のダイヤモンドはその形状からそれ程古くないものと思われます。
正面からの画像を見るとモザイクのパターンが通常のブリリアントカットより細かくなっていることから変形のブリリアントカットであることが分かります。
ルース(裸石)を横から見ると良く分かります。
通常のブリリアントカットはガードルからほぼ直線ですが、このパビリオンは曲がっています。
ガードルの下に溜めをつくって色を濃くします。
カラーストンのミックカット(クラウンはブリリアントカットでパビリオンはステップカット)で言うバルジの部分です。
このようにすることで本来持っているトーンよりフェイスアップで見たときに濃く見えます。
このダイヤモンドは普通のブリリアントカットでは一色薄かった筈です。
この技法はここ20年ぐらいでポピュラーになりました。
そのため研磨業者は石目方に余裕のあるファンシーカラーの古いダイヤモンドを見つけるとガードル下を再研磨して濃くすることが良くあります。
ガードルの下にワンクッション ファセットを作るのはプリンセスカットやラディアントカットも同じです。
ファンシーカラーにプリンセスカットやラディアントカットが多いのはそのためです。
個人的には細かなモザイクのパターンが好みでないので出来るだけノーマルなカットのファンシーカラーを買うようにしています。

77.77ct Fancy Vivid Yellow VS2 Ring side view

このリングはペンダントしても使えるように加工されています。

○Golconda Diamond Ring

23.15ct ゴルコンダ D IF

Shape: Cushion-shaped
Cut: Brilliant-cut
Weight: 23.15cts
Size: 24.78×18.49×6.44mm
Color: D
Clarity: Internall Flawless
Type: TypeⅡa
見積価格:HK$34,000,000-40,000,000

23.15ct ゴルコンダ D IF GIA Report

オークションの世界で所謂ゴルコンダ(GOLCONDA)と呼ばれているダイヤモンドです。
ゴルコンダとは最も古いダイヤモンドの産地でインドにありました。
ホープ、コイヌール等の歴史的に有名なダイヤモンドの産地です。
但しゴルコンダ産である事を証明する科学的な根拠はありません。
Gubelin、SSEF、GIA等の伝統あるラボが付記にゴルコンダ産の特徴を備えたダイヤモンドであると記載されたダイヤモンドを指します。
決して断定しているわけではありません。
あくまでも意見書です。
その条件は、
①TypeⅡaの無色(Dカラー)で透明度が抜群に高い事。
②大粒であること。
③オールドカットであること。
この中の条件で客観的に分かるのはサイズだけですが、大粒とは最低でも5カラット以上で主には10カラット以上の事が多いのが現実です。
TypeⅡaと言っても全てが透明度が高いわけではないので、その中でも取り分け透明度が高いもので肉眼で判断します。
実際に見るとロックアイスのような冷たいぐらいの透明度を感じます。
オールドカットとはブリリアントカットの原型やシンプルなステップカットでカットの変遷に照らし合わせて判断します。
この場合は、クッションシェイプである事、キュレットが極端に大きい事、シンメトリーが良くない事が決め手になります。
もちろん新産のダイヤモンドをオールドカットに似せて研磨する事は可能ですが、ラボがゴルコンダと記載する保証はないのでわざわざ完成度を下げて研磨するとは思えません。
クラリティーはFlawlessやInternally Flawlessである必要はありませんが、TypeⅡaはキズがないものの出現率が非常に高いので結果としてFlawlessやInternally Flawlessが多くなります。
但し歴史の中に登場するような素性の明らかなものはProvenance(来歴)も記載されるので確かです。

ゴルコンダの詳細については過去の記事を参照してくだっさい。