〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
5月12日から13日にかけてジュネーブの2つのオークションで落札されたFancy Vivid Pinkのダイヤモンドを紹介します。
比較して違いを見て行きます。
1つ目は12日にSotheby’s Genevaで落札され8.72ctのCushion shape Fancy Vivid Pink VS2です。
2つ目は13日にChristie’s Genevaで落札された5.18ctのEmerald cut Fancy Vivid VS2です。
重量は2カラットほど差がありますが、奇しくもグレードは同じです。
画像なので色の再現性には限界がありますが、比較する良い機会です。
○8.72ct Cushion shape Fancy Vivid Pink VS2
見積価格:CHF13,650,000 — 17,500,000
落札価格(手数料込み):CHF14,810,000 ($14,919,446 約17億9,000万円)
1カラット当たり価格:$1,710,945 (約2億500万円)
provenance(出所、由来)のしっかりしたダイヤモンドです。
古くはナポレオン1世の姪マチルド・ボナパルトが所有していたとされ、次に現れたのは私のブログでも紹介しましたが、2012年4月17日のChristie’s New Yorkのオークションでした。
その時は9.00ct Fancy Vivid Pink SI1でしたので、0.28ct研磨してSI1からVS2にクラリティグレードがアップしたのがわかります。
前回の落札価格は$15,762,500でしたので残念ながら手数料を引くと赤字です。
当時はファンシカラーの価格が毎年上がっていたのでタイミングを見計らって今回出品したと思われます。
落札者はStettner Investment Diamondsと言うファンドなので大きな金額のリスクを取るのも頷けます。
このダイヤモンドの良いところは古い石なのでカットがノーマルなのでモザイクバターンが大らかです。
○5.18ctのEmerald cut Fancy Vivid VS2
見積価格:CHF9,500,000-12,500,000
落札価格(手数料込み):CHF10,012,000 ($10,709,442 約12億8,500万円)
1カラット当たり価格:$2,067,459 (約2億4,800万円)
爪がイエローゴールドなのでピンクの色相に影響があるかもしれませんが、同じピンクでもこちらの方がパープルがかっているように見えます。
比較すると8.72ctの方はバイオレットがかって見えます。
画像からもモザイクパターンが細かいのが分かります。
クラウンはステップカットですが、パビリオンは色を濃く見せるために変形されている(modified)ためにプリンセスカットのような印象になります。
1カラット当たりの金額を比較するとこちらの方が2割ほど高いのでマーケットはこちらを高く評価したとも言えます。