〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
中国の景気変調が引き金になって世界経済に不透明感が漂う中で行われた今回の香港ショーは「最悪を覚悟したが、そこまで悪くなかった。」と言う出展者から良く聞かれたコメントが状況を物語っています。
このショーを世界最大級に育てた中国からのバイヤーは期待以上の人数が来場していましたが、元気がありません。
急激な需要の減少に出張のスケジュール調整が出来ず来場してしまった感が強く、時間をもてあましているようにも見えました。
ダイヤモンドは中国の需要減の影響を最も受けて、価格の下落が顕著です。
全体的にはここ数ヶ月で1割程度が値下がりし、特に中国からの需要の大きかったラウンド、0.3カラット、GHカラー、VS-SIクラスは3割も下がっているにも拘らず、反動で人気が出た同品質の0.25カラットサイズと価格が逆転しても売れない状況です。
同様に会場には形、サイズを問わずD IF(FL)が目立ちます。異常な原石価格の高騰から研磨業者は最大限の結果を求められています。
結果VVSクラスに対し過度なプレミアムがついているIF(FL)を研磨せざるを得ない状況となり、研磨技術の進歩も伴って多くのD IF(FL)を生んでいます。
0.3カラットの価格もD IF(FL)の問題も4Cの呪縛が根底にあります。
カラーストンはアイテムや品質で好不況が分かれています。アイテムではレッドスピネルが好調です。ビルマ(ミヤンマー)産の小粒のものやタンザニア産の大粒まで価格も強く、活発に取引されています。
モザンビーク産のルビーはもはやニューフェイスではなくなり、低品質(加熱)のものは既に値下がりしていますが、大粒の無処理(加熱の痕跡を認めず)の価格は強く、無色ダイヤモンドの価格を上回ってしまったビルマ(ミヤンマー)産の価格とのバランスでバイヤーは悩んでいます。
インドの研磨業者で話題になっていたのは、アントワープのラボHRDが開発した、メレーのソーティングマシンです。合成や高温加熱処理の可能性のある無色(D)からほぼ無色(J)のメレー(0.01-0.20ct)を全自動で毎秒3個、1時間に10,800個のハイスピードでこなす高性能なものです。
既に同様の機械はDe Beers他でも販売されていますが、1台8万ドルと言う価格にも拘らずその性能から関心を集めています。インド(スーラット)では、自社の工場の他に多くの下請工場に研磨が依頼されています。
昨今、下請工場での研磨工による合成ダイヤモンドのすり替えが問題になっています。
検査体制を整えて、抑止力も視野に入れた導入を検討しています。