原田コラム

2016/02/18

Diamonds Pipeline 2014 (1)

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

2014年のダイヤモンドの鉱山からジュエリーの販売までのパイプラインをご説明します。
毎年5月頃に前年の統計が発表されるので2014年版が最新です。
ダイヤモンド原石がどの国からどのくらい採れて、どの業者がどのくらい販売して、どの国でどのくらい研磨され、どの国にどのくらいジュエリーとして販売されているかを示しています。
出典:Tacy Diamonds Pipeline 2014
単位:Billion US$ 1Billion US$=10億ドル 約1,150億円(US$1=¥115の場合)

ダイヤモンド原石産出国金額

国別のダイヤモンド産出金額のグラフです。
1位のボツワナと2位のロシアは毎年デットヒートしています。
この2カ国で半分近いシェアです。
ピンクのボツワナ、ナミビア、南アフリカはデビアスの牙城です。
多くの鉱山がデビアスの傘下で、特にボツワナのシェアが高く重要性の高さを表しています。
デビアスがロンドンのサイトをボツワナに移したことも理解できます。
まさにボツワナはデビアスの生命線です。
そのためボツワナ政府の発言権が高まり、現在は産出の1割をボツワナ政府に納めています。
今後も契約更改の度に年貢が増える可能性がありますが、ダイヤモンドの流通の中で儲かっているのは鉱山会社とジュエリーブランドだけと言われているので、まだ余裕がありそうです。
因みに産出量(ct)の1位はロシアで約30%のシェアです。
2位はボツワナですが、金額とは異なりシェアは約20%なのでボツワナの方が品質が高いことが分ります。
単価(1カラットあたりの価格)は鉱山の品質を表します。
以下にグラフの各国の単価を上位から列挙しました。

1.レソト共和国 $990.18
2.ナミビア $602.57
3.カナダ $1666.78
4.南アフリカ $164.76
5.アンゴラ $149.86
6.ボツワナ $147.84
7.ロシア $97.47
8.ジンバブエ $50.00
9.オーストラリア $32.76
10.DRCコンゴ $8.72
出典:Kimberley Process Certification Scheme

1,000ドル近いレソトから10ドル以下のDRCコンゴまで大差です。
レソト共和国は南アフリカ共和国の中央に位置している人口2百万人程度の小国です。
但し、ダイヤモンドの単価はダントツで大粒のTypeⅡaの原石を多く産出することが知られています。
GRAFFさんも15%出資しているGem Diaomondsが所有しているLetšeng鉱山が有名です。
3,000メートルの高地で世界で最も高いところにあるダイヤモンド鉱山でもあります。
ナミビアの主な産地は沿岸の海底です。
内陸の鉱床が河川によって浸食され、運ばれていく間にキズの少ない高品質なものが海までたどり着いて海底に堆積したので単価が高くなります。
デビアスが所有している特殊な採掘船で海底から掘り出します。
オーストラリアは資源メジャーのRio Tintoが所有している Argyle鉱山が有名です。
1980年代後半から1990年代前半は世界一の生産量を誇りましたが、有名なピンクダイヤモンドを除くと工業用品質が主で世界最大の工業用ダイヤモンド鉱山と言われていました。
その鉱山も2020年には寿命を終えますのでこのリストからいずれ消えます。
現在オーストラリアに代わって工業用の最大の供給国はDRCコンゴです。
量ではボツワナ、ロシアに続いて3位ですが、圧倒的な単価の低さが品質を物語っています。

Diamonds Pipeline 2014 (2)に続く。