ジュエリーにはその年代特有のスタイルがあります。
そのスタイルからジュエリーの作られた年代を特定し、主要宝石の産出状況と合わせて産地や処理の有無の目安をつけることができます。
このコラムでは宝石の年代ごとの主要な産地と処理、そして当時の日本で流行したスタイルをご紹介します。
ルビーの例(1970~1980年代)
主な産地 : タイ国 スタイル : テーパーダイヤモンドの取り巻き
当時の流行スタイルはリングの場合、上写真のようなテーパーダイヤモンドで主石を取り巻いたものです。このスタイルはルビーに限ったことではなく、サファイヤやエメラルドなどにもありました。
1970年代のルビーを使用した指輪の大半はタイ産です。1960年代に、それまで黒味が強くて宝飾品として使えなかったタイ産のコランダムを高温加熱し、美しさを引き出す処理が行われるようになりました。その結果、これまで受け入れられなかったタイ産ルビーが市場に受け入れられ、1970年代には宝飾品として使用されました。
タイ産ルビー加熱前 | タイ産ルビー加熱後 |
ミャンマーモゴック産の無処理ルビー
タイ産の加熱処理されたルビーが市場に出てきた一方で、600年以上の伝統あるミャンマーモゴック産のルビーは、量は限られていますが当時は高温加熱されていない無処理のものが主流でした。
タイ産とミャンマー産は色味が異なるので、プロであれば見分けることができます。当時のスタイルでルビーがミャンマーモゴック産であれば、無処理の可能性が考えられます。
無処理のモゴック産ルビー(40倍の拡大写真)無処理のモゴック産ルビーには60度に交わるシルク・インクルージョンのほか、スタビィ(ずんぐりした)状の結晶インクルージョンが見られる場合があります。
加熱処理したモゴック産ルビー(63倍の拡大写真)加熱処理されたものは写真のようなスノーボール(雪だるま)インクルージョンが見られるものがあります。これは加熱処理によって溶けてボールのように丸くなった内包結晶です。
上記でご紹介したようにジュエリーのスタイルから製作年代を特定し、主要宝石の産出状況と合わせて産地や処理の有無の目安をつけることができます。