ジュネーブ、ニューヨーク、香港と言えば世界3大オークション開催地だ。ジュエリーのオークションに限っても1回で取扱高が100億円を超えることもある。その他の世界の主要都市でも行われるが3都市に比べると取扱高に開きがある。メインのオークションは各地で年2回春、秋に開催されるのでシーズンになると毎週のようにどこかの都市で開催されていることになる。
オークションが開催されない国は近くの大きなオークション開催地が担当する。例えば日本では残念ながら国際オークションは開催されないので、香港が担当のエリアとなる。もちろん担当以外の開催地に出品する事は可能だが、出品者の強い希望や特定の地域で人気のあるアイテム以外は原則として担当地域での出品となる。
絵画でも世界で通用する画家は印象派の一部であるように、ジュエリーも世界的ブランドは数えるほどだ。多くのブランドは特定の地域での人気が高い。一番大きなマーケットの米国ではTiffany & Co.を筆頭にDavid Webb、Henry Dunay、Fred Leighton等が人気だ。Mikimotoも米国の他に日本からの需要で香港でも人気がある。日本からはGimelと弊社SUWAも香港のオークションにブランドとして出品されている。
ブランドの他に宝石種にも地域色がある。ルビー、サファイア、エメラルドに代表されるカラーストンの大粒はアジアでの人気が高いので香港での出品が圧倒的に多い。地域を超えて特定の民族に好まれている代表は翡翠だ。翡翠は中国系の人々に需要が限定されるので香港での取引が殆どだ。中国の文化の影響が強い日本でも明治から昭和の半ばまで翡翠のジュエリーが人気だったが、現在は主に出品に限定されている。
宝石の大きさに拘る地域もある。品質よりも大きい事が何より優先するのは中東地域で、その反対に大きさよりも品質に拘るのは日本だ。1カラットサイズ程度の大きさのカラーストンの周りをダイヤモンドで取り巻くスタイルは日本限定になる。いくら品質が良くても国際オークションでお目にかかる事はない。世界では宝石は「大きい事は良いこと」になっている。
時代や由来(Provenance)に強い地域もある。作られてから100年以上を経過しているアンティークジュエリーは主にロンドンで競られる。また、王室の誰が所有していたと言うような由来のはっきりしているジュエリーはジュネーブが得意だ。
ジュエリーは本来インターナショナルなアイテムだが、以上のように地域、民族等でも特徴があるのは興味深い。
文:原田信之
以上、ブランドジュエリー2017 SUMMER-AUTUMN掲載の記事より。