原田コラム

2020/02/19

どうなる?ダイヤモンド価格


 「2020年のダイヤモンド価格はどうなるの?」と言う問いかけにずばり答えることは株価や為替の予想のように難しいことです。しかし、過去のデータから傾向を掴むことは出来ます。(これからは表を参照)
過去のダイヤモンド価格はデビアスの存在抜きには語ることができません。1990年ぐらいまでは原石販売のシェアは80%と正に独占状態でした。ダイヤモンド全体の価格を維持しプロモーションまで手がけて業界のGuardian(守護者)と呼ばれていました。

  90年代にはいると91年にロシア連邦の崩壊が起こり、それまでは契約で殆どの原石をデビアス経由で販売していたロシア産原石が漏れ出し、1995年末には契約終了となり直接販売に切り替わりました。続くように96年7月には当時産出量で世界最大のリオティント傘下のアーガイル鉱山が離脱し、シェアも80%から60%に下落しました。98年には3グレーナー(0.75ct)以下の原石の価格維持はしない方針を打ち出し、ついには2000年7月に60年以上に渡るダイヤモンド価格維持政策を放棄することを公式に通知しました。ダイヤモンド価格は需給に任せると言うことです。それまで長い間急激な変化がなかったダイヤモンド価格は以降アップダウンを始めます。

 価格維持を放棄してから数年が経ったころから中国の経済バブルが始まり米国、欧州、日本の量的緩和政策も加わって稀少性の高い3カラット以上の大粒ダイヤモンドに需要が集中して2008年に価格は倍以上に跳ね上がりました。2008年9月に起きたリーマンショックで1-2割ダウンしてもすぐに戻り2011年から2014年頃まではデビアス時代の約3倍の高値の高原状態が続きました。
2015年以降は中国経済の減速と米国の量的緩和政策終了もあって、大粒ダイヤモンドの価格もクールダウンしピークから2-3割安で現在に至っています。

  1カラット未満のダイヤモンド価格は2000年以降も殆ど変化がないか、むしろ値下がりしています。唯一0.01-0.03ctが2011年に1年で倍になったことがありましたが、これは中国でスイスの高級時計とブランドのジュエリーのバブルが起こったためです。最高品質のいわゆるメレーダイヤモンドが過去にない高値を示したものの2-3年で収束して元に戻っています。

1880年代後半に80%を誇ったデビアスのシェアも2018年には約36%まで落ち込みました。とは言え離脱したロシアのシェア約30%と合わせて7割近くの寡占状態なのでプライスリーダーの地位は守り続けています。
さて、本題の2020年のダイヤモンド価格の傾向はと言うと大粒ダイヤモンドの価格については相場の格言にある「山高ければ谷深し」で下落傾向は続いて着地点を探る相場となり、反対に山が殆どなかった1カラット未満の相場はフラットの相場になるのではないか思います。この予想はあくまでもドル建ての相場を前提としたもので日本での価格は為替相場を加味する必要があるので必ずしも一致しません。

  また、このグラフはラウンドブリリアントの価格推移ですが、現在のところラウンド以外のファンシーシェイプはラウンドよりも割安で取引されています。しかし、実際の売買は同じグレードでも形の善し悪しで大きく差があります。いつか形の良いファンシーシェイプの稀少性にマーケットが気づけば価格も逆転して値動きも別なものになるかも知れません。

  例外はファンシーカラーダイヤモンドの一部です。濃くて彩度の高いピンクとブルーは記録的な高値を維持しています。カラーレスに比べて極端に流通量が少ないので、美しいものはしばらく高値が続くことが予想されます。

*サイズ別ダイヤモンド価格の増減表:ニューヨークのRAPAPORT社が発表しているダイヤモンド価格を元に作成
*De Beers Market Share 出典:PaulZimnisky.com

雑誌:JEWEL2020 NEW YEAR号の「ジュエリーアドバイザーの仕事帖」に掲載