〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
昨日の新宿御苑のソメイヨシノです。
首都圏では、初夏のような天候の中、誰もが桜のはかない上品なピンクを存分に楽しんだことでしょう。
でも、良く見るとはっきりピンクと分かるのは花弁の元だけです。
周りの花びらは殆ど真っ白ですね。
これは、人間の目が全体を捉えて、ピンクが強調されるのでしょう。
これは、宝石のファセットのモザイク模様もまったく同じです。
4カラットサイズの南アフリカ産のピンクダイヤモンドです。
この上品なピンク色は、桜の色によくたとえられます。
ファセットのモザイク模様を見ると淡いところ、濃いところがあるのが分かります。
プロのバイヤーでこのピンクを好きな方は少なくありません。
私もピンクでしたら、アフリカ産又はブラジル産が好みです。
大きな結晶がでるのでサイズも楽しめます。
それに対し、コレクターや販売員の方に人気があるのは、オーストラリアのアーガイル鉱山産の紫がかったピンクダイヤモンドです。
濃い色が特徴で、メレーのような小粒のピンクでは他の産地のものと比較にならないくらい良く発色します。
下のエメラルドカットのピンクダイヤモンドは典型的なアーガイル産です。
良く見ると紫の他にブラウン味を感じます。
これは、アーガイル鉱山は、もともとブラウンのダイヤモンド原石を多く産出し、ピンクはそのブラウンの原石の中から出てくるからです。
ブラウンダイヤを研磨しているインドの業者の金庫には、たまたま出てきたピンクがひっそりとしまわれていることがあります。殆どはプライベートコレクションにしてしまっていますが、運良く取引が出来ると、破格な値段で買うことが出来ます。ただしこのコレクションが特品であったことはありません。世の中そんなに甘い話はないものです。