原田コラム

2007/04/21

合成ダイヤモンドのグレーディングレポート

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

今年からGIAが合成ダイヤモンドのグレーディングレポートを発行し始めました。

鑑別結果は業界で古くから使っているシンセティック ダイヤモンドではなく
Laboratory grown(ラボラトリーグロウン)としています。
消費者が少しでも天然のイメージを持たないように言葉を選んだようです。
業界も合成ダイヤモンドが存在するのは事実で、しっかり天然と区別されるためには必要と考える方が多いようで概ね前向きに受け止めているようです。
門を閉ざすと合成を作る側からの情報が遮断されるへの不安が鑑別会社にはあるようです。
また、レポートの要所に黄色を使って天然ダイヤモンドのレポートとはっきり区別しています。

鑑別結果の言葉は歓迎ですが、合成ダイヤモンドにグレーディングレポートを発行することには反対です。
鑑別のレポートならば分かりますが、価値に繋がる稀少性の一部を判断するレポートを、いずれは思い通りの品質を作ることが出来るであろう合成ダイヤモンドにつけること自体意味がありません。
科学の進歩によりDカラーであろうと、Fancy Vividであろうと自由に出来るはずです。
また、設備さえ作ってしまえば、コストはどんどん下がっていきます。

合成ルビーの歴史を考えるとヒントになるかもしれません。
合成ルビーは既に100年も前に出来ています。
当初は、鑑別方法が分からず、天然と同様な価格で取引されていたと思われますが、鑑別技術が確立したことと、工場で大量生産が進んだ結果、現在では、どんな色味でも安価で販売されています。
素材の価格より研磨賃の方が高い場合もあります。
もし、合成ルビーのレポートに カラー:ピジョンブラッド クラリティー:VVS1と記されていても有難がる人がいるでしょうか。

誤解のないように、付け加えておきますと、現在は結晶の成長の軌跡を調べること等で天然か否かの鑑別は可能です。
ただし費用がかかりますので、ある程度のサイズと品質のダイヤモンドに限られます。それより小粒は、個々の会社のトレーサビリティー(追跡可能性)に頼らなくてはなりません。