原田コラム

2007/05/11

カシミールサファイア

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

少し前ですが、4月25日にニューヨークのクリスティーズオークションに出品されたカシミールサファイアが信じられない価格で落札されました。

Kashmir Sapphire 22.66ct from James j. Hill

22.66カラット クッションシェイプ
落札価格 $3,064,000  1ドル120円換算で3億6千7百万円
1カラットあたり約$135,000 約1千6百万円

サファイアのオークションの価格としては、過去最高の価格です。
同時に1カラットあたりの価格も過去最高でした。

このサファイアは米国のグレート・ノーザン鉄道(GN Great Northern Railway)の建設で有名な鉄道王ジェームス・J・ヒル(James J. Hill 1838-1916)が残した由緒正しい宝石の一つです。

実物を拝見していないので、美しさはお伝えできませんが、落札価格にはショックを受けました。
オークションの常で最後にどうしても落札したい人が二人残ると相場では考えられない価格になることが良くあります。
ただし、宝石は一つ一つが異なり、落札価格が相場になりますので、高い安いは安易に言うことが出来ませんが、これで、カシミールサファイア全体の相場が上がる気配がします。
既にここ2年はビルマ産の無処理ルビーは、相場が跳ね上がっています。
次は、カシミールサファイアかも知れません。

稀少性の高い宝石は、既に過熱状態です。
まだ上がり続けるか否かは分かりませんが、長い目で見れば、価格は上がれば下がります。
もっと長い目で過去を振り返れば、貨幣価値の下落によって上がり続けています。
何れにしても、宝石は投機で買うべきでありません。
あくまでも、身に着けて楽しむことが目的で、楽しんだ後にもある程度の価値が残ると考えると良いでしょう。

このオークションのハイライトはインドのマハラジャが所有していた天然真珠のネックレスのセットでした。
こちらも、オークションにおける天然真珠の価格では過去最高でした。
価格は、何と$7,096,000 約8億5千万円です。
こうなるとコメントのしようがありません。
天然真珠は、ある程度計画的に生産できる養殖真珠と異なり貝が偶然に作り出した稀少性の高いものです。
カシミールサファイアも天然真珠も稀少性が高いことに加えて氏素性が良いことが高値を生みました。