原田コラム

2007/05/25

ピジョンブラッド

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

ルビーのピジョンブラッドについて読者の方から質問がありましたのでご説明いたします。

そもそも、ピジョンブラッドは伝統的なヨーロッパの概念です。
決して、範囲が厳密に決められているものではありません。

その概念が形成されたその当時の環境を以下にまとめます。

1.産地
良質のルビーはビルマのモゴック鉱山に限られていた。
2.処理
当時は、現在のように高温加熱の処理は存在していないので、
宝石品質のルビーの透明度は高かった。
3.ジュエリーのメインの宝石には存在感のある大粒が使われていた
多くは、3カラット以上で日本のように1カラット以下のものをメインストンに仕立てることはなかった。

以上のこととピジョンブラッドは濃い赤色ということを合わせると。

ビルマのモゴック鉱山産の無処理でメインストンサイズの濃い赤のルビー」と言うことになります。

同じ濃い赤色だったら、1カラット以下の小粒のものでも良いのではと言う方もいらっしゃいますが、濃くても大粒なら内側からモザイク模様が浮かび上がり明るくなるのに、小粒は、モザイクが小さく私たちの眼には明るく感ぜず、真っ暗な印象になってしまいます。

また、ビルマ産ルビーの多くは紫外線に当てると蛍光を発します。
もともと紫外線を含んでいる自然光の下では燃えるような赤になることも美しさの源です。

更に当時は今より品質の高いものがジュエリーになっていたので、より透明度が高く、モザイク模様もより鮮明で美しいルビーの代名詞になったのだと思います。
今のように加熱のものが殆どの場合は、透明度が高くないので大粒で濃い赤色でもモザイク模様は弱くなります。

以上の条件を満たすピジョンブラッドと言われるようなルビーは限られています。
もちろん、出会えたら幸運ですが、言葉に拘らずにより大粒で少し明るい透明度の高いルビーを選んでみたらいかがでしょう。
日常生活の多くの場面で美しい赤色を発します。

そして、4ミリ以下のような小粒のものは1カラットサイズのものより更に薄めがジュエリーとして綺麗になります。