〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
いつもながら、ピジョンブラッドについて皆さんの関心は高く、ご質問も多く戴きます。
ゆもさんからのコメントにここでお答えしたいと思います。
Gubelin研究所は、もともとゴルコンダ等の特別な宝石には付記として別紙にコメントをつけていましたが、ピジョンブラッドに言及したのは、タイのGRSのレポートにピジョンブラッドと言うコメントが載ってから本格的になったと記憶しています。
1999年に元Gubelin研究所のラボに勤めていたDr. Perettiがバンコクにラボをオープンして、当初ある範囲の色のルビーにVivid Red(Pigeon blood)と記したレポートを発行していました。
これには、我々も困っていましたが、後にGRS Pigeon blood typeになりました。
ルビー、サファイアの集荷地と言う地の利もあって、このレポートがインターネットの業者等に出回り、市場シェアが高まりました。
見かねたGubelinが積極的にある範囲のルビーにコメントとして、下記のように記し始めました。
This colour variety of ruby may also be called “pigeon blood red” in the trade.
この表記には、大きな違いがあります。
GRSは、GRS内のPigeon bloodの基準に照らし合わせてと言う意味ですが、Gubelin研究所は概念的で商売上「pigeon blood red」と呼ばれることがあるとしています。
では、どのように決めているかと言うと身も蓋もありませんが、考え方に大きな違いがあります。
また、Gubelinは別紙に「pigeon blood red」について詳しく書いています。
私もラボが価値に関する範囲に言及することには反対です。
しかし、既にGIAが品質の一部についてダイヤモンドグレーディングレポートを発行して久しく、小売の世界では品質の基準になっています。
グレードだけで美しさは判断できないことを宝石に詳しい方はご存知ですが、長く使われてきたことと便利さで広く浸透しています。
このことから、誰かが品質の範囲について決めることを止めることは出来ません。
しかも、範囲を決める人は、良いものとそうでないものを別にしようとして始めますので、厄介です。
線を引けば、必ず矛盾も出てきます。
その矛盾をついて、ディスカウンターが活躍するも私たちは経験済みです。
私に出来るのは、「レポートを鵜呑みにしないで、自分の目で美しさを判断してください」と言い続けることです。
Gubelin研究所の「pigeon blood red」については、日を改めてご紹介したいと思います。