〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
「HPHT処理」とは、High-Pressure High-Temperature(高温高圧)処理のことです。
ダイヤモンドを高圧下で熱処理することによってダイヤモンドの色を改善します。
日本語では「高温高圧処理」と呼ばれていますが、何故か英語では順番が逆さまになります。
実際の処理の順番が英文どおりに高い圧力をかけてから高温にするのかも知れません。
今年の初めにインドから仕入れたマーキスの中から初めて「HPHT処理」のダイヤモンドが見つかりました。
通常、諏訪貿易は仕入れは原石の出所がはっきりしている研磨業者から仕入れることを原則にしています。
この場合は、Traceability-Trace(足跡をたどる)とAbility(できること)の合成語で日本語では「追跡可能性」と訳されている-があるので処理の問題はありません。
但し、品質やサイズの特定のものを集める場合は、流通業者を通して広く集めなくてはならない事があります。
その場合は、ラボに依頼して鑑別をしなくてはなりません。
今回はこのケースです。
以前より同じルールでたくさんのダイヤモンドを鑑別してもらってきましたが、「HPHT処理」が見つかったのは今回が初めてです。
因みに「HPHT処理」は専門の機械と技術が必要ですので、一般的な業界の方には鑑別できません。
今回は初めに全国宝石学研究所にお願いして「HPHT処理」の鑑別結果が出ました。
初めてのケースだったので、確認のためAGTジェムラボラトリーにも依頼しましたが、結果は同様でした。
その後、万全を期すためにニューヨークのGIAに送りました。
今週の月曜日にダイヤモンドと共に結果が送られてきました。
GIAもやはり「HPHT処理」でした。
現物をご覧ください。
日米で結果は同じでしたが、大きく異なるのは、GIAで「HPHT処理」と判断されるとダイヤモンドのガードルに「HPHT PROCESSED」とレーザー刻印がされる事です。
これは間違って無処理のダイヤモンドとして流通をしない為のものです。
もちろん刻印は、研磨により落とすことは出来ますが、GIAの姿勢を見ることが出来ます。
一般のデジカメで撮影したので鮮明ではありませんが、ガードルに「HPHT PROCESSED」とレーザーで彫られているのが分かります。
但し、日本のラボにも良いところがあります。
日本の両ラボは結果が出るまでに1週間足らずでしたが、GIAは行き帰りの日数を除いても1ヶ月半以上かかりました。
世界中から大量の依頼があるのは分かりますが、差がありすぎます。
無色のものでも3週間以上かかります。
グリーン等の難しいファンシーカラーの場合は半年かかることも少なくありません。
日本のラボは仕事が速いのが有難いことです。
しかも技術的には同等以上です。
しかし、悲しいことに国際的な仕様ではないので、日本国内しか通用しません。
全国宝石学協会さんも英語のレポート発行の予定があるようですが、日本を代表してがんばってもらいたいところです。
「HPHT処理」に関しては、全国宝石学協会さんのページに詳しく載っていますのでご覧ください。