原田コラム

2007/06/20

キンバリー プロセス

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

米国の俳優レオナルド・デカプリオ主演の映画「ブラッド・ダイヤモンド」をご覧になった方も多いと思いいます。この映画で広く知られるようになった紛争の資金源になっているダイヤモンドの不正取引を阻止する制度として、ダイヤモンド原石の国際認証制度「キンバリープロセス」があります。
日本ももちろん参加しています。

実は、2週間前に原石をアントワープで購入して、写真撮影のために原石を輸入し、研磨のために再びアントワープに輸出する作業を行いました。
今までも原石を輸入することは多々ありましたが、輸出したのは初めてでした。
結果から申し上げますと、「キンバリープロセス」がこんなに厳格に行われていることを知らず、その煩雑さに驚きました。

Kimbery Process Certificate(キンバリー・プロセス証明書)とは、原産地がどこの原石が誰が誰にいくらで取引するか明記したものです。
原産地から始まり、輸出の際に発行した証明書を輸入先の管轄の機関がその証明書の発行元に確認して通関します。
証明書は、輸出の度に新たなものが作成されます。

今回は、アントワープから原石を輸入した際にEuropean CommunityのKimbery Process Certificate(キンバリー・プロセス証明書)が添付されていました。
輸入時の通関は、専門の業者が行っていますので、この制度がどのように行われているか深く認識していませんでした。
否が応でも認識したのは、輸出時でした。
専門の業者が手続きを行うのは変わりありませんが、準備と時間は全くの想定外でした。

まず、輸入時の証明書と通関書類一式と写真を3枚用意します。
写真①原石の写真
写真②その原石を梱包する箱に入れた状態の写真(箱は開けておきます)
写真③梱包して封をした写真
これを用意して、業者が経済産業省に証明書の作成を依頼します。
経済産業省では、輸入時の証明書の発行元であるFederal Public Service Economy Belgiumに原石の同一性を確認して、新たに日本の証明書を作ります。
証明書が出来るまで約1週間から10日もかかります。
それから通常の輸出の手続きです。

ここでは、この制度の実効性云々には触れませんが、参加している国はこのように厳密に行っていることを知らせるのが経験したものの務めだと思いご紹介しました。

映画では、ダイヤモンドの購入を控えるように訴えていますが、ダイヤモンドは紀元前より人々を魅了してきた伝統ある宝石であることと、映画に出てきたような大粒で稀少性の高いダイヤモンドの殆どは過去に採れて還流しているものであることも忘れてはなりません。

どんな制度も完璧ではありません。
武器や特定の物の取引を制限しても貧困がある限り流血は止まりません。
人間は悲しい性(さが)の持ち主なのでしょうか。