原田コラム

2007/07/10

濫用的販売者

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

昨日、米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドによる、ブルドックソースの買収防衛策差し止め申し立てで、東京高裁が、スティールを自身の利益のみを追求する「濫用的買収者」に当たると認定したと言うニュースが流れました。

宝石業界には、買収に値する会社が見当たらないのか、話題になりませんが、
「濫用」(一定の基準や限度を越えてむやみに使うこと)と言う言葉から昨今の無処理(非加熱)ルビー、サファイアの商品が連想されました。

最近では、弊社オーナーの諏訪恭一氏の著書「宝石1、2、3」の影響もあってか、無処理の宝石に関心が高くなっています。
巷の宝石屋さんの広告やネットの通販でも見るようになりました。
問題は、その品質です。
確かに加熱をしていないと言うレポートは付いていますが、美しくないものが多く、本末転倒なことになっています。

「加熱を必要としない美しいものは、稀少です。」

「加熱を施してなくても美しくないものは稀少ではありません。」

ビルマに行くと無処理で美しくないルビーはたくさんあります。
そのままでは美しくないので、少しでも綺麗にしようとしたのが加熱処理です。
本来価値の低いものに無処理のレポートをつけて販売することはレポートの濫用です。
言うならば、それを販売する人は「濫用的販売者」です。

ダイヤモンドの「4C」を逆手に取って販売しているのと何ら変わりはありません。
何か「お墨付き」的なものが出来ると利用するものが必ず現れます。
何度も言いますが、レポートの鵜呑みをしないでください。
まず、ご自身の目で見て美しい宝石をお求めください。

因みに多くの業界の方は、加熱をしていない状態を「非加熱」と表現していますが、私たちは、研磨以外を施していない宝石を称して「無処理」と呼んでいます。
英語で言うと“unheated”と“untreated”の違いです。
エメラルド等の含侵処理されていないものも“untreated”です。