〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
宝飾業界は停滞しているものの、国としては高成長を続けているインドと異なり、タイは国全体に問題が多く、人々が将来に希望が持てずにいます。
人件費の高騰を嫌って各産業の工場が中国やベトナムを始めとする周辺国に本格的に逃げ出しています。
長らく安く安定していたタイバーツの高騰とクーデーター後の政情不安がこれに拍車をかけています。
バンコクの宝飾業界は完全に中華系からインド系に主導権が移っています。
宝飾品製造も米国輸出向け中心にタイからインドの工場に拠点が移っているので、低品質のカラーストンを仕入れるインド人バイヤーが目立ちます。
既に現地の業界は、インド系なしでは考えられなくなっています。
インドの方は世界中の色々な産業で存在感を発揮しています。
特にマスのマーケットでシェアを争う仕事に長けています。
私の仕事は、対極にありますが、うかうかすると追いつかれてしまうかも知れませんので、油断することなく仕事の質を上げていかなくてはなりません。
お問い合わせがありましたので、少しタイのダイヤモンド研磨産業について説明します。
タイのダイヤモンド研磨産業は、25 年程前にベルギー資本のデビアスのサイトホルダーとバンコクの中華資本が合弁で始めました。
その後、両者は分かれて、それぞれが独立して工場を運営してました。
主に研磨しているのは、sawableの原石から作るメレーダイヤモンドです。
当時インドで研磨していたのはmakableやcleavageの原石から作るメレーダイヤモンドでした。
それぞれは、価格も歩留まりも研磨工程も全く異なります。
sawableからのメレーダイヤモンドは、高価ですが、透明度が高く、完成度が高いので、ジュエリーに仕立てたときの美しさは格別です。
現在は、インドでもsawableの原石を研磨していますので、差は少なくなってきましたが、プロポーションの均一性においては、タイの研磨に一日の長があります。
しかし、人件費の高騰は如何ともし難く、今日では、中国やタイの周辺国に工場が移っています。