原田コラム

2007/10/23

パライバ トルマリン

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

パライバタイプトルマリン(加熱)

久しぶりにドイツのIdar-Oberstein(イーダー・オーバーシュタイン)に来ています。
ご存知の通り、こちらは伝統あるカラーストンの研磨地です。
地理的な理由でアフリカ産の原石が集まりやすいのが特徴です。
もちろん、ブラジルの原石も集まります。

ネオンカラーが綺麗なブラジル産のパライバトルマリンも当初からイーダーのドイツ人が手がけていました。
初めに発見されたパライバ州の隣の州から同様のトルマリンの鉱山が見つかり、2年前ぐらいまでは少ないながらも供給が続いていました。
その後、その鉱山も底を着き始めたところにアフリカのモザンビークから少し淡めなパライバカラーのトルマリンが発見されて、現在ではその手のトルマリンの主流を占めています。

ブルーやブルーグリーンのネオンカラーのパライバタイプのトルマリンの殆どが加熱処理によって美しい色が引き出されています。
もちろん、加熱といってもルビー、サファイアの現在主流の1,800度に達するような高温ではありません。
1,000度未満の古典的な加熱処理です。

以前にもご紹介しましたが、美しいブルーやブルーグリーンに加熱して変化するのはバイオレット(青紫)のものです。
下の写真の左側が一番上の写真のようになります。
右のパープル(赤紫)のものは、加熱しても色が抜ける程度です。

無処理パライバタイプトルマリン

パライバ原石

こちらの原石のバイオレット(青紫)の部分が加熱によって下のような結晶の色に変化します。

パライバ原石 (加熱後)

パライバの価格は、その美しい色の魅力と少ない産出量によって引き続き上昇傾向です。
10カラットを超える大きなサイズの本当に美しいものは、5年前の倍以上の価格がついています。
その価格は、無処理のルビーの同サイズのジェムクオリティーを除けば、カラーストンの値段としては最も高い値段です。
長い時間をかけて価格が形成されたダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド等の伝統ある宝石の価格を凌ぐことには疑問を持ちます。
新しい宝石は、当初の「流行」から、引き続き人気が続いて「習慣」となり、更に歴史を積み上げて「伝統」になっていきます。
習慣になるには、ある程度の産出量が必要です。
産出が極端に少なくなるとデマントイドガーネットようなコレクターズアイテムになり、価格もそれほど上がりません。
更に硬度や耐久性が十分でないと人気がなくなり「習慣」になりません。

私は、上記の点から極端に高いパライバタイプのトルマリンは10年以上前から積極的に扱っていません。