〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
米国フロリダ州のRenaissance Diamonds Inc.が製造した人工のカラーダイヤモンドを拝見する機会に恵まれました。
サイズは、1カラットから2カラット
シェイプは、特許をとっているRenaissance Cut(上の写真左)と名づけられたラディアントカット様式のカットを中心にラウンド、ハートシェイプ等がありました。
カラーは、天然ダイヤモンドのグレーディングで表すと
Fancy Intense Yellow
Fancy Deep Yellow
Fancy Vivid Yellow
Fancy Orangish Yellow
Fancy Brounish Yellow
まで、濃いものを中心に幅があります。
肉眼で色を見て、天然か人工か判断はつきません。
天然でも十分にありえる色です。
但し、ルーペで覗くとキュレット付近に色の抜けているところがあるものもあります。
色むらは天然でもありますが、スポット的な抜け方が特徴的で、ルーペで観察する場合一つの判断材料になります。
クラリティーは、VVSからSIクラスまで様々です。
SIクラスのものは、テーブルから垂直方向に伸びる亀裂が特徴的に見られますが、天然でも十分にありえますので判断材料にはなりません。
これは、作る釜の構造の問題のようなので、量を見ることによって特徴的なパターンをつかむことが出来るかも知れません。
同じ機械(釜)で作るために原石の形はほぼ同じです。
写真の右側が原石です。
アップするとこんな具合です。
現在、最大で4カラットの原石まで作ることが出来るそうです。
4カラットまで成長させるのに既に4日間しかかからないとの事でした。
この原石の形からは、ラディアントカットのような隅切りの四角型が最も歩留まりが良く適しています。
価格は、天然の4分の1に設定しています。
機械が1機、数千万円と高額で一つ作るのに3日から4日かかるので、現在はこの価格とのことです。
但し、機械で作るものの恒として、最初に設備投資してしまえば、作れば作るほど安くなるので人工ダイヤモンドも既にそのレールにのったと言う印象でした。
一つだけ意外だったののは、亀裂の有無と黄色の色味を完全には制御できていないことでした。
色はその時の窒素の量が微妙で、上記のような幅が出来てしまうとこことでした。
亀裂に関しても同様です。
しかし、これらの問題も技術の進歩が解決することでしょう。
イエローの他にブルーとピンクのサンプルも見せていただきました。
どちらも、0.2~0.3カラットサイズのラウンドでした。
ブルーは、このサイズではあり得ないほどの濃さ(Fancy Insense Blue)なので、バイヤーでしたら疑問か違和感を感じるでしょう。
ホウ素を入れてブルーにするといっていたので、TypeⅡbであることは確かです。
ピンクは、アーガイル鉱山のようなパープリッシュピンクで、肉眼では殆ど天然との差は分かりません。
ルーペで見て、あまりにも内包物がないので、疑問を感じるかも知れません。
以上、天然との差を肉眼とルーペで判断できるかと言う点で見てきましたが、機械さえあれば鑑別はそれ程難しくありませんので、ご心配なく。
この会社の人工ダイヤモンドには、ガードルにRenaissanceの刻印がされています。
最後に、自然が作った宝石と全く同じものを作るには自然と同じだけの長い年月と一つ一つ異なる環境の変化を作らないと出来ませんので、実際は非現実的です。
人工の宝石は、何れ大量生産されるので稀少性は殆どありませんが、美しいアクセサリーの材料としては歓迎されます。