〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
Nissan GTRの価格は777万円。
同等の加速性能のポルシェは1,800万円。
では、どうしてGTRはポルシェに近い価格に設定しなかったのでしょうか。
開発責任者水野和敏さんがある雑誌のインタビューに777万円と言う価格について語っていました。
Nissan GTRは、3年後の残価(中古価格)を80%以上、650万円以上にすることから決められた。
現在3年後の残価が一番高いのはポルシェで、新車価格の7~8割。
メルセデス・ベンツ、BMWだと7割。
日本車ではレクサスが6割弱。
トヨタ、日産は5割程度。
800万円の普通の日産車は、3年後に400万円になる。
価格(新車価格)ではなく価値(再流通価格)の時代になってきている。
では、どのようにして価値を創造するか。
まず、生産台数を1,000台に抑え、3年間の無償点検で新車時の性能を保証する。
それには、800万円では買えないが、600万円台なら買えるスカイラインGTRの熱烈なファンの存在がある。
ディーラーは、新車時の販売で100万円の利益が出て、3年後に再販売すればまた100万円の利益が出て、3年間の無償点検でオイル代やタイヤ代等でマーチを4台売ったのと同じ利益が上がる。
この話は、宝飾業界に耳が痛い話です。
価値とは本来宝石に最も期待されるところです。
宝石業界が一番考えなければならないところの何歩も先を行っています。
一部の稀少車を除いて、車は年月と共に価値(再流通価格)が下がっていき、最終的には限りなくゼロに近づきます。
一方、ダイヤモンドやルビー、サファイア、エメラルドなど伝統のある宝石で稀少性の高いものの価値(再流通価格)は年月を経ても車のように下がることは殆どありません。
もともとの産出が限られているため車のように生産制限をする必要もありません。
もちろん宝石も車と同様に最初に流通マージンの分はなくなりますが、その後はある一定のレベルで推移するのが一般的です。
本来、宝石は車より遥かに価値(再流通価格)のある商品なのです。
そのため欧米では、これらの宝石は、手数料的な感覚で販売されます。
但し、貴金属でフォルムを作って流行を作る装身具については、ここで言う価値の部分は期待しません。
たとえそれにダイヤモンド等の宝石が留められていても、流行が終わると地金に戻されてしまうので別な扱いです。
ここで言う宝石とは、あくまでも伝統ある宝石で、ある程度の大きさがあり、美しく稀少なものです。
もちろん、稀少なものなので無処理又は無処理に近いものであることは言うまでもありません。
私は、日本でも価値を重視した価格で販売されるビジネスモデルの実現を目指します。