原田コラム

2009/09/03

「大きな葛篭(つづら)」

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

I and D color face up

この二つのダイヤモンドのどちらか一つ差し上げますと言われたらどちらを選びますか。
直径は、小さいほうが5.3ミリ、大きいほうが6.5ミリと数字だけ比べると1.2ミリの差しかありません。
皆さんは、目を凝らして差を見出そうとするでしょう。
また、どちら方が高いか考えを巡らすでしょう。

美しさも変わらないように見えると思います。
写真より現物のほうが大きさ以外の差を見出すのは困難なぐらいです。

更に加えて、価格の差も殆どありません。

そらぞれのスペックは以下の通りです。

0.56カラット Dカラー、Internally Flawless EX

1.05カラット Iカラー、VS2 EX

ソリテールリング(立爪リング)にするのでしたら、私は迷わず大きいほうを選びます。
小さいほうのダイヤモンドで宝石の装身具を仕立てるのには、スリーストンやファイブストンリングのように幾つか集めて大きな輝きを作る必要があります。
単独では、存在感が不足してしまいます。
サイズ(大きさ)は宝石の品質の重要な要素です。
ファイブストンリング

ラウンドブリリアントカットは輝きが強いので、ある程度の大きさまではIカラー以上の差が分かりづらく、カラーレス(無色)のように見えます。
これが、輝きの穏やかなマーキスシェイプ、ペアーシェイプ等のファンシーシェイプの場合は色溜りもあり、差がはっきりします。
付加価値をつけるための特別なカットや過度なクラリティーを求めずに、大粒を選んでみては如何でしょうか。
「山椒は小粒でピリリと辛い」より「大きな葛篭」の選択が「受け継ぐ人に喜ばれること」になることもあります。
もちろん透明度が高い美しいダイヤモンドであることが前提です。