〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
数ある稀少性の高いダイヤモンドの中でも最も有名なブルーのダイヤモンドHopeをご存知の方は多いと思います。
ワシントンのスミソニアン博物館に展示されているので実際にご覧になった方もいるでしょう。
以前に私のブログでも紹介しました。
もし、このHopeに同じ原石から研磨されたもう一つの大粒のブルーダイヤモンドが存在しているとしたらどうでしょう。
この歴史的発見が現実になるかもしれません。
2008年12月11日のブログで紹介したWittelsbach DiamondがGraff Diamondsによってリカットされて新たにWittelsbach-Graff として生まれ変わりました。(上の写真はリカット後のWittelsbach)
○オリジナル
Wittelsbachダイヤモンド
35.56カラット クッションシェイプ Fancy Deep Grayish Blue VS2
○リカット後
Wittelsbach-Grafダイヤモンド
31.06カラット クッションシェイプ Fancy Deep Blue Internally Flawless
大きく口を開けたキュレットを3割小さくして輝きを改良した結果、Fancy Deep Grayish BlueからFancy Deep Blueとグレイ味が抜け、稜線やガードルのチップを取り除いてVS2からInternally Flawlessになっています。
この2つのダイヤモンドは、約300年前の同時期にインドから産出されたことが歴史的に知られています。
そのため以前から、同じ原石から研磨されたのではないかと言う説がありましたが、その時代にはソーイング(Sawing)の技術がないことから懐疑的に見られていました。
自然に割れて別々に産出されたと考えることもできますが、かつて一度も一緒に並べられたことがなく検証することは不可能でした。
このWittelsbach-Graffダイヤモンドが来週1月28日(木)より8月の1日(日)までワシントンのSmithonian National Museum of National HistoryでHope Diamondと一緒に展示されます。
2つのダイヤモンドが300年以上の時を経て初めて出会うことになり、兄弟なのか恋人なのか想像を掻き立てられます。
今回は博物館で専門家がデータを分析するので結論がでるかもしれません。
個人的には、色の特徴から同じ原石から生まれた兄弟である可能性はあると考えます。
そしてその可能性を信じたいとも思います。
Graff氏が最初からこの展示を考えて落札したとすると、破格の落札金額も理解できます。
やはりLaurence Graff氏は稀代のダイヤモンド商人です。
20世紀のダイヤモンドの象徴であるHarry WinstonがHopeを預かって展示したように、Wittelsbachを同じステージに上げたことでGraff氏がダイヤモンドの次世代のリーダーであることを知らしめているようです。