〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
今年は世界的に厳しい寒波に襲われていますが、ここアントワープも先週は雪で交通がマヒ状態でした。
緯度からすると結構な寒さなところですが、普段は意外と雪は多くありません。
そのため、ひとたび大雪が降ると慣れていないので自治体の対応が遅れてパニックになります。
幸い今週は、雨で済みそうなので、一安心です。
但し、時折吹く突風に飛ばされそうになります。
もちろん、傘は役に立ちません。
何度も濡れたドブネズミのようになりました。
さて、こちらでは昨年から続く原石高のポリッシュ(研磨済み)安に苦しんでいます。
一昨年の後半のリーマンショック以降、過熱した原石価格も急激に下落して一旦は収束したように見えました。
2009年に入って暫くすると、再び上昇してリーマンショック前の状況に近づく勢いです。
それに引き換え、ポリッシュの価格は世界不況の影響で原石価格の上昇に付いて来ていません。
中国、インド等の一部の新興国は元気ですが、全体の需要不足は否めません。
失われた15年の日本からの需要は底這状態ですが、不況の震源地の米国の落ち込みは酷く回復過程とは言いがたいものがあります。
米国の経済指標の向上はダイヤモンドの需要喚起には程遠く、先が見えません。
研磨業者にとって辛い期間が続きます。
体力のないものは淘汰を余儀なくされるでしょう。
原石を傘下の研磨業者に独自の価格表で配給のような形で供給しているのは、DTC(De Beers)社だけです。
他の主な供給会社は、入札制に切り替えています。
DTCは未だ4割近い原石市場での占有率を保って影響力を堅持していますが、他の6割以上のプレーヤーが入札で価格を市場に委ねているのをみると、崩壊前のソビエト連邦のように見えます。
また、原油価格の主導権がメジャーからOPEC(石油輸出国機構)に移ったように、鉱山会社より産出国の意見が強くなる傾向を見ても、DTC(De Beers)方式は長く続かない気がします。