原田コラム

2010/05/24

問題の本質

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

GIA Grading Report

鑑別会社の発行したダイヤモンドグレーディングレポートのグレードがかさ上げされていたことが騒動になっています。
過去にも幾度となく起きている問題ですが、何故このような問題が起きるのか本質を考えます。

○Diamond Grading Reportとは何か。

まず、名称から意味を考えます。
マスコミの記事で「鑑定書」とありますが、正しくは「Diamond Grading Report」です。
以前は「ダイヤモンド鑑定書」としていた鑑別会社の表記も殆どが既に「ダイヤモンド グレーディング レポート」の表記になっています。
「鑑定書」と言う言葉には常に価値についてのイメージが付きまといます。
日本語に置き換えるのが容易ではないので、英文のカタカナ表記が使われていますが、性格的には「品質分析書」です。

上の英文は、4Cのシステムを作り上げたGIA(Gemological Institute of America)のDiamond Grading Reportの表に明記されている注意文を拡大コピーしたものです。

訳(一部)
このレポートは「保証書」「価値判断書」「価格査定書」の類いではなく単にダイヤモンドの特徴について述べたものです。
・・・内容に関しては信頼できる宝石店や専門家にお尋ね下さい。

この文章がDiamond Grading Reportを正確に表しています。

4CとはGIA-Gemological Institute of America-が20世紀半ばに作ったダイヤモンドのを評価する基準です。
当時の宝石店の店主は勘と経験だけでダイヤモンドを仕入れていました。
4Cが開発され、それを勉強することで基準に照らし合わせての仕入れをすることが出来るようになりました。
4Cはもともとプロの間の品質の目安だったわけです。
もちろんプロなので4Cで各項目が評価されていても、美しさは自分の目で判断することが当たり前でした。
それが、いつの間にか小売の現場で使われるようになり、美しさも判断出来るがごとき一人歩きが始まったのが問題の発端です。