原田コラム

2010/07/22

鑑別が大切

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

Round Diamonds

ダイヤモンドの処理で厄介なのは「高温高圧処理」です。
見た目には分からないので、高価な機械と高度な鑑別技術を要します。
ブラウン味等の色を薄くする処理なので、鑑別の対象はカラーレスのダイヤモンドです。
カラーレスのダイヤモンドを全て鑑別するのは莫大な費用がかかりますが、幸いなことにこの処理が施されるダイヤモンドは窒素が殆ど入っていないType2と称されるグループでダイヤモンド全体の数パーセントと限られています。
弊社では原石の追跡可能性(traceability)が確保できるもの以外は、自社でType2を選別して全宝協さんに鑑別依頼をしています。
残念なことに今までに数個の「高温高圧処理」が見つかっています。
通常グレーディングレポートを作らない0.3カラット未満も含まれていることが問題を深刻にしています。

先週、既に「高温高圧処理」と分かっているダイヤモンドを別の鑑別会社に依頼しました。
結果は、4Cの記述とType2が判明しただけで処理については不明と出てきました。
このことは、鑑別会社に何が求められているかを明確にしています。
プロならば肉眼で美しさを判断し、ルーペを使って肉眼で見えない要素を確認する作業は出来ますが、処理の有無や原産地の同定は鑑別のプロの領域です。
本来、ダイヤモンドグレーディングの作業は各メーカー、小売店が独自に行うべきです。
取扱量から鑑別会社にアウトソーシング(外注)するのは結構ですが、鑑別会社のグレーディングレポートを作るのではなく、自社の保証書に記載する内容の補助作業として行うべきです。

ダイヤモンドもGem Stoneの一つです。
ルビー、サファイアやエメラルド等と同じく「鑑別」が大切です。
合成ダイヤモンドも今後ますます製造されると想像できるので、今まで以上に「鑑別」の重要性が高まってくるでしょう。
処理されたものや合成ダイヤモンドを販売してしまったら信用は一気に地に落ちます。
分からなかったと言ってもプロである以上、「不作為の罪」に問われても仕方ありません。
鑑別能力を見極めるのもプロの責任です。