〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
GRAFFさんより夏号の広報誌をいただきました。
手に取りやすい約26センチ四方の正方形にこだわりを感じます。
厚手の上質紙に写真が美しい充実の80ページです。
2008年暮れに話題になったWittebach Diamondの記事がありましたので、ご紹介します。
○Wittebach Diamond
35.56カラット
クッションシェイプ
Fancy Deep Grayish Blue VS2
2008年12月10に行われたクリスティーズ ロンドンのオークションで£16,393,250 ($24,311,190)のダイヤモンド価格におけるオークション記録でGraff氏が落札しました。
その後、グラフ ダイヤモンドによる再研磨によりカラーとクラリティーの向上が図られ以下のデータに生まれ変わり、名前もWittelsbach-Graff Diamondと命名されました。
●Wittelsbach-Graff Diamond
31.06カラット
クッションシェイプ
Fancy Deep Blue Internally Flawless
現在は、今週末の8月1日まで米国ワシントンのスミソニアン博物館にてHope Diamondと同じ部屋に展示されています。
Wittelsbach Daimondの大きさは郵便の消印サイズとありますが、Graff氏(恐らく)が指の上に載せている写真がありましたのでご覧下さい。
Wittelsbach Daimondの歴史についての記述もありましたので、抜粋して記します。
1664年にスペインのPhilip 4世が娘のInfanta Margarita Teresaとオーストリアの皇帝Leopold 1世の婚約のお祝いに贈ったのが最初の記録として残っています。
その後、バイエルンの下院議員のWittelsbach氏が所有したことが名前の由来となりました。
第1次大戦後バイエルンは共和国になり、Wittelsbach Daimondは1931年にクリスティーズのオークションに出品されましたが、競売の前に姿を消しました。
1958年のブルッセルの万博で再登場しますが、当時は単にBlue Diamondとして展示されていました。
1962年、ベルギーの宝石専門家によって、そのBlue DiamondがWittelsbach Diamondであることが判明します。
そして、2008年12月10日のクリスティーズ ロンドンのオークションで落札され、現在はLaurence Graff氏の下にあります。
以前のブログでも触れましたが、Wittelsbach DaimondとHope Diamondは同じ原石から研磨された兄弟ではないかと言う仮説がありました。
鉱物学的な結論は分かりませんが、もし本当だとしたらなんと言う運命なのでしょう。
広報誌に一緒に並べて撮った写真がありました。
さて、皆さんはどのように思いますか。
(左Hope Diamond、右Wittelsbach-Graff Diamond)